問うて伝わく、法華経の意をもしらず、義理をもあぢは〃ずして、
ただ南無妙法蓮華経とばかり5字7字に限て一日に一遍、
一月乃至一年十年一期生の間にただ一遍なんど唱へても、
軽重の悪に引かれずして四悪趣におもむかず、ついに不退の位にいたるべしや。
答へて伝く、しかるべきなり。
問うて伝く、火火といへども手にとらざればやけず、
水水といへども口にのまざれば水のほしさもやまず。
ただ南無妙法蓮華経と題目ばかりを唱ふとも義趣をさとらずば
悪趣をまぬがれん事いかがあるべかるらん。
答えて伝く、師子の筋を絃として一度奏すれば余の絃悉くきれ、
梅子のすき声をきけば口につ(唾)たまりうるをう。
世間の不思議是くのごとし、いはんや法華経の不思議をや。
小乗の四諦の名ばかりをさやづる鸚鵡う天に生ず。
三帰ばかりを持人、大魚の難をまぬかる。いかにいはんや、
法華経の題目は八万聖教の肝心一切諸仏の眼目なり
日蓮